入居時退去時の敷金って何?
あなたは賃貸住宅にお住まいですか? そうであれば、入居時退去時に敷金のことで話をしたことがあると思います。
よく不動産屋さんの窓一面に張られている物件の紹介状には、『礼金〇カ月 敷金〇カ月』と書いてありますが、礼金はそのまま読んで字のごとく、”大家さんに入居させて頂きます。ありがとう”という意味合いで渡すお金だということはなんとなくわかりますよね。
そして、不動産やさんには”仲介手数料”というものが礼金と同じ意味合いで存在します。
一方の敷金は読んで字のごとく・・・の礼金や仲介手数料の様にはすぐにわからんと思います。
まあ、敷金をひとことで言えば
『大家さんがあなたにお部屋を貸すことになって、今後、あなたが家賃を滞納した時や部屋の一部を壊したり、汚したりした時のリスクに対する保証金』
と思っていれば間違いないです。
なので、あなたがきちんと家賃を払っていて、綺麗にお部屋を使っていれば、退去時に返してもらえるお金なんですよ。
でも、綺麗にしてるって言っても、綺麗の基準は人それぞれ違うし、『あんたが壊した。』『いや元から壊れてて壊したのは俺じゃない』という風に賃貸住宅は退去時に、敷金がらみでトラブルになりやすいといわれてます。
敷金がらみのトラブル回避法
誰でもトラブルは嫌だし、お金を多く取られるのはもっとイヤだし、つまんないことで時間をとられるって、ほんと勘弁してほしいですよね。
まして、退去時=他の場所での入居時でもあるので、時間もお金も必要な時です。
なので、敷金がらみでトラブルにならない方法を少し考えてみましょう。
1. 入居時(契約時)に新居の汚れ、破損場所をチェック
トラベルの種は入居時(契約時)からまかれます。
入居時(契約時)は、些細な所でも、気になった汚れや破損部分を写メしておいて、不動産屋さんに連絡して書類を作ってもらえば良いです。
ほら、レンタカーで車借りる時って、借りる車のキズやへこみをチェックして書類にサインするでしょ。同じような書類を作ってもらえば良いんです。そうしておけば、、将来、借りてたお部屋の退去時に修繕費用を請求されたら、『そこは元からキズになってましたよ。私が払う必要ないですよね!』と言えます。
2.特約の有る無しを確認
入居時、不動産屋さん(大家さん)と交わす(した)賃貸借契約書の中に、退去時の費用負担に関する特別な定め=『特約』があるのか確認しておきましょう。
あればその内容をチェックし、納得いかなければ不動産屋さんと交渉すべきです。
入居時、敷金なしで『ラッキー、得した~!』と思ってたのに、賃貸契約書に『退去時にハウスクリーニング代が別途かかります。』とか『退去時には入居時の状態に戻すこと』といった特約が書かれていて、高額請求されるトラブルもあるようです。
入居時・・・というか契約する時にそういった特約などが付いていないか、確認しときましょうね。
3.原状回復ガイドラインを把握
あとは国土交通省が公表している『原状回復ガイドライン』の内容を把握しておけば、日々の生活のちょっとした注意やお掃除で敷金流出を抑えることができます。
それでは、国土交通省の原状回復ガイドラインを見てみましょう。
(1)原状回復とは
原状回復を「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義し、その費用は賃借人負担としました。そして、いわゆる経年変化、通常の使用による損耗等の修繕費用は、賃料に含まれるものとしました。⇒ 原状回復は、賃借人が借りた当時の状態に戻すことではないことを明確化
(2)「通常の使用」とは
「通常の使用」の一般的定義は困難であるため、具体的な事例を次のように区分して、賃貸人と賃借人の負担の考え方を明確にしましたA :賃借人が通常の住まい方、使い方をしていても、発生すると考えられるもの
B :賃借人の住まい方、使い方次第で発生したり、しなかったりすると考えられるもの(明らかに通常の使用等による結果とは言えないもの)
A(+B):基本的にはAであるが、その後の手入れ等賃借人の管理が悪く、損耗等が発生または拡大したと考えられるもの
A(+G):基本的にはAであるが、建物価値を増大させる要素が含まれているもの⇒ このうち、B及びA(+B)については賃借人に原状回復義務があるとしました。
(3)経過年数の考慮
(2)で解説しているBやA(+B)の場合であっても、経年変化や通常損耗が含まれており、賃借人はその分を賃料として支払っていますので、賃借人が修繕費用の全てを負担することとなると、契約当事者間の費用配分の合理性を欠くなどの問題があるため、賃借人の負担については、建物や設備の経過年数を考慮し、年数が多いほど負担割合を減少させる考え方を採用しています。(4)施工単位
原状回復は毀損部分の復旧ですから、可能な限り毀損部分に限定し、その補修工事は出来るだけ最低限度の施工単位を基本としていますが、毀損部分と補修を要する部分とにギャップ(色あわせ、模様あわせなどが必要なとき)がある場合の取扱いについて、一定の判断を示しています。
出典:国土交通省ホームページ(http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000020.html)の図を削除して使用。
ちょっとわかりにくいので、一つ一つかみ砕いてみていきましょう。
まずは1行目に『善管注意義務』とありますね。善良な管理者としての注意を払って使用する義務という意味です。
腹が立ったから蹴飛ばして壊したり、明らかにわざと汚したりしてはいけません。また汚したまま放置していてはいけません。・・・ということです。なんとなくわかりますね。
次に内容を見てみましょう。
ふむふむ・・・わかりやすく言えば、
(1)原状回復とは
あなたが借りていたお部屋の、時間とともに劣化した(経年変化)部分や『普通に使っていれば消耗するでしょ』といった場所の補償は月々の家賃に含まれていますよ。だから大家さんは、あらためて修繕費用を請求できません・・・ということですね。
そして、”『原状回復』はあなたが住み始めた当時の状態に戻すことではないですよ” と⇒で強調しています。
(2)「通常の使用」とは
『普通に住んでて生じた消耗または劣化した場所』や『使い方が悪く、借りている人だからこそ生じてしまった損害ではない場合』は、その現状回復費用は大家さんの負担ですよ~”・・ということですね。
(3)はあなたがお部屋を借りている年数が長ければ長いほど、原状回復の負担が軽くなります。・・・ということです。
(4)は修繕することによって、周りと調和しなくなる(いわゆる浮いた状態)場合の判断を示しています。
具体的には同じ色の壁紙が3面あったとしても、破損部分が1面の一部分である場合、その1面分から通常損耗・経年劣化分を差し引いた分があなた(借主)の負担となり、残りすべてが大家さん負担となるようです。。
以上、『原状回復ガイドライン』を把握してみました。
原状回復の具体例
普段からこの『原状回復ガイドライン』を基準にしたお部屋の使い方やお手入れ(ハウスクリーニング)をしていれば、退去時に支払う修繕費用やハウスクリーニング代を最小限に抑えることが出来ます。
また、この『原状回復ガイドライン』を把握することによって、ハウスクリーニングのプロに依頼することになっても必要最低限の依頼をすることが可能となり、ハウスクリーニング代を最小限に抑えることが出来ます。
でも、上記ガイドラインだけではいまいち具体性に欠けていますよね。具体的な内容をみていきましょう。
詳しくは、東京都都市整備局のホームページ(http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/juutaku_seisaku/tintai/310-4-jyuutaku.htm)内、賃貸住宅トラブル防止ガイドラインに、本当にわかりやすく絵図入りで説明されているので、徹底して把握されたい方はそちらを見て下さい。
やりがち!あなた(借主)が負担する原状回復義務
それではまず、誰もがやってしまいそうな、借りてるあなたが負担する原状回復義務とは具体的にはどんなことでしょうか。
あなたが負担する原状回復義務その1・・・壁紙(下地のボード)のクギ穴やネジ穴
あなたが負担する原状回復義務その2・・・壁紙の結露の放置で拡大してしまったカビやシミ(通常の使用を超える)
あなたが負担する原状回復義務その3・・・床に飲み物等をこぼしたことで発生したシミやカビ
それでは1つ1つ見ていきましょう。
あなたが負担する原状回復義務その1・・・壁紙(下地のボード)のクギ穴やネジ穴
画びょうやピン程度の小さな穴で、下地ボードの張替えが不要の場合は大家さん負担ですが、クギ穴やネジ穴みたいに大きくて、下地ボードの張替えが必要になる場合は退去時に、借りてるあなたの負担となります。
え!クギとかネジ打っちゃまずいじゃん!
私も昔やってましたわ。そん時(退去時)、費用とられてたのかな?
あと、似たケースで、照明取付用金具のない天井に直接つけた照明器具の跡(通常の使用を超える)も退去時、あなた(借主)が負担する原状回復義務となります。
入居時から、クギやネジを使わず、画びょうやピンだけ使うようにしましょう。
あなたが負担する原状回復義務その2・・・壁紙の結露の放置で拡大してしまったカビやシミ(通常の使用を超える)
(通常の使用を超える)っていうのが良くわからんのですが、日当たりなど自然現象で変色した壁紙の張替えは大家さん負担ですが、結露を拭かなかったため生えてしまったカビやシミの処理費用は、退去時に、あなたの負担となります。
まめに拭いとれば、問題ないんすけどね。壁ってそんなに拭き掃除しないですから。日曜日の朝に必ずやるとか、習慣化しておいたほうが退去時に良い条件となります。濡れた壁紙はまめに拭きましょう。
でも、テレビの後部壁面の黒ずみ(いわゆる電気やけ)は、通常損耗として大家さんが負担なんだって!面白いね。
あと、ポスター貼った跡の変色は大家さんが負担となってます。
あなたが負担する原状回復義務その3・・・床に飲み物等をこぼしたことで発生したシミやカビ
ジュースやお酒など飲み物等をこぼしてしまい、手入れ不足で生じたシミやカビの対処は退去時、あなた負担となります。
これもやりがちですよね~。でも、退去時のことを考えれば、あなたも飲み物をこぼした時に『まあイッカ~』でなく、真剣に、できうる限り拭き拭きしましょう!
ちなみに、家具類を置いたために、床・カーペットに残った設置跡やへこみは大家さん負担です。
あなた(借主)が負担するハウスクリーニング関連の原状回復義務
次はハウスクリーニングの場所別にみた、退去時にあなた(借主)の負担となる原状回復義務の例を挙げます。
1.お風呂・洗面台・トイレ
賃貸期間中の清掃やお手入れを怠った結果、汚損が生じた場合の水垢・カビ等(善管注意義務違反)。
2.台所
油汚れ(使用後の手入れが悪くススや油が付着している場合)(通常の使用を超える)。
3.ガスコンロ置き場・換気扇
手入れを怠ったことによる油汚れ・すす(善管注意義務違反)。
4.壁(クロス)
『借主所有』のエアコンから水漏れし、放置したため壁が腐食した場合(善管注意義務違反)。
※ちなみに、『借主所有』のエアコン設置による壁のビス穴・跡は通常損耗の場合、貸主負担だそうな。
通常の使用の汚損を超えると判断される『たばこ等のヤニ』での変色や匂い。
※ちなみにお部屋自体が喫煙禁止が条件ならば、用法違反となるそうです(罪重い~)。
5.床(フローリング)
借主の不注意で雨が吹き込んだことなどによる色落ち。
引っ越し等で生じた引っかきキズ(善管注意義務違反・過失)。
6.全体
落書きなどの故意による毀損。
7.庭
戸建て賃貸住宅の庭に生い茂った雑草の草取り。
8.その他
ペットによる柱等のキズや匂い。
以上があなたが退去時に請求されやすい具体的的な原状回復義務内容です。(もちろん、上記事例がすべてではないです。)
注目すべき点は下記2点です。
1.キッチン周りや換気扇(レンジフード)の油汚れ
2.お風呂や洗面台・トイレの水垢・カビ
上記2点は普通に使用していても自然についてしまう汚れなので、なんか汚れ付いてるのが当たり前になってて意外と見落としがちであるところです。
私も昔、退去時に敷金を返してほしいため、妻と一緒にせっせとお掃除して自信満々で大家さんに確認してもらったところ、換気扇の羽根が油まみれで、ハウスクリーニング代をしっかり差し引かれてしまったことがあります。
”換気扇の羽根さえ綺麗にしとけば、ハウスクリーニング代とられずに済んだのに~”という思いと、”どうせハウスクリーニング代とられるなら、自分たちでハウスクリーニングしなければよかった~”という思いとでずいぶんと悔しかったことを覚えています。
退去時に損しないハウスクリーニング方法
事前に下記内容をチェックし、ツボを得たハウスクリーニングをして、退去時には無駄な出費を抑えて下さい。
チェックその1・・・上記目次”やりがち!あなた(借主)が負担する原状回復義務”を実践
上記目次の”やりがち!あなた(借主)が負担する原状回復義務”の黄色塗りつぶし部分を実践して下さい。
チェックその2・・・特約事項等で退去時にハウスクリーニング代等を払うことになっているかチェックする。
退去時にハウスクリーニング代が別途かかると特約事項等で定められていて、その金額も決まっているのであれば・・またそのことに対し、あなたが納得しているのであれば、わざわざあなたが自分でハウスクリーニングする必要はありません。時間のムダ使いです。その時はすべてプロにお任せしましょう。
あなたが納得しているのであれば、プロにお願いするのが一番確実です。
ただし、いくら請求されるのか事前に確認しておき、思っている以上に請求されるようであれば、不動産屋さんや大家さんと話し合ったほうが良いです。
ハウスクリーニング代は地域によって相場が異なります。あなたの住んでいる地域のハウスクリーニング代の相場をネット等で調べて、比較すれば良いと思います。
チェックその3・・・自分でハウスクリーニングする時=上記目次”あなた(借主)が負担するハウスクリーニング関連の原状回復義務”の内容をチェックしながら実行
ちょっと時間に余裕がある時に、自分でハウスクリーニングする時は上記目次”あなたが負担するハウスクリーニング関連の原状回復義務”で内容をチェックしながら実行すれば、効率よく取り組めます。
綺麗にした場所のクリーニング代は請求されずにすむ可能性もあります。自分でハウスクリーニングする価値は十分あります。
チェックその4・・・自分でハウスクリーニングのプロに依頼して良いか、大家さん(不動産屋さん)に確認
あなたが退去時に原状回復義務で費用を払うこと自体は納得しているが、大家さん(不動産屋さん)に任せることに少しでも不安なことがあれば、自分で信頼のおけるハウスクリーニングのプロにお願いするのも一つの方法です。
その場合は、自分でハウスクリーニングのプロを依頼して良いか、事前に大家さん(不動産屋さん)より承諾を得てから行いましょう。
まとめ
入居時にどんな契約を交わしていても、退去時、必要以上にお部屋が壊れていたり、汚れていたら、ハウスクリーニング代や修繕費用は請求されます(特約で退去時一切の請求無しと書いてあれば別ですが)。
例えば、入居時に敷金0ケ月だからといって、退去時もお金を払わなくて良いということではないのです。
一方、納得のいかない金額を請求された場合で不動産屋さんや大家さんとうまく話し合いが出来ない場合、各地の消費者生活センターに相談することをお薦めします。
でも結局は人と人とのつながり『感謝の気持ち』と『思いやり』が大事です。
部屋を貸してくれた大家さん、紹介して管理してくれている不動産屋さんに日ごろから感謝し、お部屋を綺麗に使用して、汚してもきちんと対処しておけば、話し合いもすすみ、トラブルも解決していくことでしょう。
あなたと最も密接なつながりのある大切なお部屋が感動と幸せをもたらす素敵な場所となるために・・・
上記方法を試してみてはいかがでしょうか。